昭和天皇が国民に感謝していたら

 A級戦犯が合祀されて以降、昭和天皇靖国神社の参拝を行わなくなった。これは有名なので私でも知っている。しかし不勉強であるため、A級戦犯合祀以前にどういう感じで参拝していたのかはぜんぜん知らない。「朕の国体を守るためによく命を捨てて戦ってくれた! 感動した!」とか感謝の言葉を述べていたのだろうか。

 もちろん実際は「国内外の方々の犠牲を痛ましく思います」とか「不戦の誓いを新たに〜」的な無難なコメントしか残さなかったであろうことは想像がつく。調べてはいないけれど確実だろう。

 では、昭和天皇「皆様の犠牲のおかげで伝統ある天皇制を護持できました」「朕の戦争責任を追及せずうやむやにして頂き、心より感謝申し上げます」などと国民に率直な喜び・感謝の意を表することは本当にありえないのだろうか。

 昭和天皇がそうしない理由はいくらでもある。早々に降伏しても天皇制の存続が認められていたなら犠牲に感謝するのは筋違いだし、昭和天皇天皇制の存続を望んでいたとは限らないし、戦争責任を問われずにいたことを本人は心苦しく思っていたかもしれない。国民(臣民)が天皇に尽くすのは当然という価値観の持ち主であった場合や、国民の不甲斐なさに憤っていた場合、自身に戦争責任があると考えていなかった場合なども、感謝の念など抱きようがないはずだ。

 なので、あくまで仮定の話とする。大勢の犠牲の上に自身の地位が成り立っていると認識した上で、昭和天皇が公然と国民に感謝を示した……というパラレルワールドにおいて、感謝を向けられた下々の者たちはどのような反応を見せるだろうか。ちょっと考えてみたが、概ね以下のように大別されるような気がする。

(1) 「なんともったいないお言葉!」 「よくぞ言ってくれた」 「国民にありがとうと言えるなんてさすが」
(2) (ちょ、陛下がそんなことを仰ってはなりませぬ) (黙ってれば私らがうまくやりますから空気をお読みください!)
(3) 「天皇ってこんな人だったん?」 「なんか失望した」
(4) 「自分で犠牲を強いておいて感謝はないわ」 「感謝するより謝罪しろよ……」
(5) 「どうでもいい」 「よくわからん」 「興味ないわー」

 ちなみに私なら正直さを評価しつつ4番目だ。天皇を深く敬愛しているっぽいMukkeさんやsionsuzukazeさんなどは1番か2番だろう。ここにないような反応をする人もいるかもしれない。

 しかし実際のところ、昭和天皇が自身の戦争責任や天皇制の是非をどう考えていたのか気になる。当人の立場ならきっちり意見を表明していてもおかしくない話題のはずだが、不勉強なせいか見聞きした覚えがない。もし死ぬまでノーコメントを貫いていたのなら(あるいは抽象的な言い回しで煙に巻いていたのなら)、多少は後ろめたさがあったのかもしれない。もちろん私が知らないだけでがっつり語っていた可能性もあるので、もしご存じの方がいらっしゃるなら教えていただけると嬉しい。