否定論者の有名人(追記あり)

 南京事件小ネタその2。

 意外と知られていないようだけど、作家の志水一夫氏も南京事件否定論*1だったりする。と学会では唐沢俊一ばかりが目立って、この人のすごさが知られていないように思える。せっかくだからアピールしておく。

 この人はAmazonで大量のリストマニアリスト*2を作成していて、その中には南京事件関係のものもいくつかある。リストに加わっている本にコメントをつけていることもあるのだけど、これがまた典型的な否定論者発言のオンパレード。

16. 「南京事件」の探究―その実像をもとめて (文春新書) 北村 稔
リスト作成者のコメント:
"国民党 (蒋介石政権) の宣伝担当者の自伝から、当時虐殺を言い立てた欧米人ジャーナリストたちが、国民党から買収されていたことを突き止めた!!"

http://www.amazon.co.jp/%EF%BC%A0%E8%8B%B1%E6%96%87%E3%81%A7%E6%9B%B8%E3%81%8B%E3%82%8C%E3%81%9F-%E3%80%90-%E5%8D%97%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E8%99%90%E6%AE%BA-%E3%80%91-%E9%96%A2%E9%80%A3%E6%9B%B8%E2%80%95%E6%A4%9C%E7%B4%A2%E3%81%A7%E3%81%AF%E8%A6%8B%E3%81%A4%E3%81%91%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%81%84%E3%82%82%E3%81%AE%E3%82%82%E9%9B%86%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/lm/NBHX9NQAZNW7/ref=cm_lm_byauthor_title_full

3. 南京の真実 (講談社文庫) ジョン ラーベ
リスト作成者のコメント:
"当時この人、日本軍の治安維持への努力に対して感謝状を出しているのですが、その話が抜けていますね。あと、当時の南京の人口に関する発言にご注目!!"

http://www.amazon.co.jp/%EF%BC%A0%E3%80%90-%E5%AE%88%E6%86%B2%E5%9B%BD%E6%B0%91%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%8E%A8%E8%96%A6%EF%BC%9F%E5%9B%B3%E6%9B%B8-%E3%80%91%E2%80%95%E4%BB%96%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%A8%E4%BC%BC%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%AF%E5%81%B6%E7%84%B6%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%8F%E5%BF%85%E7%84%B6/lm/10FMY9SATSA12/ref=cm_lm_byauthor_title_full

23. The Rape of Nanking Iris Chang
リスト作成者のコメント:
"『レイプ・オヴ・ナンキン』 の副題は 「忘れられたホロコースト」 というのですが、最大数万のゲリラ狩りを数百万単位の民族絶滅政策と同一視するのは、いかにも政治宣伝ぽいですね"

http://www.amazon.co.jp/%EF%BC%A0%E5%A4%A7%E8%AB%96%E4%BA%89-%E3%80%90-%E3%83%9B%E3%83%AD%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AF-%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%EF%BC%9F-%E3%80%91%E2%80%95%E6%A4%9C%E7%B4%A2%E3%81%A7%E3%81%AF%E8%A6%8B%E3%81%A4%E3%81%91%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%81%84%E3%82%82%E3%81%AE%E3%82%82%E9%9B%86%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/lm/HDM591VG534P/ref=cm_lm_byauthor_title_full

 ほかにもすごいコメントは多々あるのだけど、とりあえずわかりやすいものを引用(強調は私による)。騙されているのか意図的にやっているのか、いずれにせよこのレベル。

 そして衝撃的なのはこちらのリスト。『なぜ人はニセ科学を信じるのか』『奇妙な論理』『不思議現象 なぜ信じるのか』といった科学的考え方を啓蒙する良書が並んでいる。これらをすべて読んでいて、それでもなお南京事件否定論に与するというのは悪い冗談としか思えない。私がこれらの本の著者だったらズコーッとすっ転ぶところだ。

追記

 ブックマークコメントで指摘されたように、と学会では原田実氏も南京事件否定派*3。私は数年前にこちらの掲示板で知ったけど、奥宮正武氏の『私の見た南京事件』の目撃証言を偽証扱いするというかなり危険なレベルのようだ(これ、指摘を受けてちゃんと撤回や謝罪をしたのかなあ)。

 検索してみると、自身のサイトに「歴史を捻じ曲げる日本の司法」と題してこんな文章をアップしていた*4

しかし、彼らの「断定」を裏付けるような決定的な証拠が実際どこにあるのだろうか。日支事変以降の旧日本軍のシナ大陸での戦闘行為は侵略戦争だったのか、731部隊が実際に人体実験や細菌戦を行なっていたのか、「南京虐殺」は本当に起こったのか、これらの問題はいずれも歴史学的には論争が続いており、決着のついていない問題である。

偽造の「歴史的文書」という問題は今後ますます深刻になるだろう。CGの発達はその気になれば墨の濃淡や紙の古色まで鮮明な古文書の「写真」をネット上に公開することをも可能にした。いわゆる「南京大虐殺」について、その証拠写真と称するものがメディアに流布しているが、現在のところ、それらはいずれも偽作や出典隠しによるトリック(たとえば映画のスナップを報道写真と言い換える)が指摘できる稚拙なものばかりである。だが、今後はより鮮明な「証拠写真」が出てくることがありうる。それどころか松井石根大将直筆の「南京市民無差別殺害命令」さえ、その気になれば画面上で作ることも可能だろう。

 こんなことを書いていて研究者としての資質を疑われないのかと他人事ながら心配になる。歴史学者じゃないから問題ないというわけでもないと思うけど。

*1:明確に自称してはいないと思うので私の認定。ついでにアホウヨと言ってもいいと思う。

*2:http://www.amazon.co.jp/gp/richpub/listmania/byauthor/A1DF9F6KP41H75/ref=cm_lm_fullview_byauthor

*3:ほかにも何人かいるらしいけど確実な分だけ。

*4:http://www8.ocn.ne.jp/~douji/shihou.htm この記事は2004年のものだけど、特に訂正などはないようなので現時点でも同じ認識と判断。